乳がんの症状と検診

乳がんによる石灰化を映し出すマンモグラフィー

乳がんは女性が発症するがんとしては国内で最も罹患数が多く、死亡率別で見てみると全がんのなかで5位となっています。罹患数は最多なのに、死亡率は5位にとどまっているということは、検査機器の進歩、新しい抗がん剤の登場などにより、早期発見・治療が可能になって、がんが治癒する患者さんが増えたことを示しています。

30代の女性にも発症が増加中

肺や胃、大腸などの他のがんは一般的に治療後の経過観察期間を5年としていますが、進行が比較的ゆっくりなタイプもある乳がんは、10年を一つの区切りとしている点も乳がんの大きな特徴です。

近年、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんに比べて乳がんの注目度が高まっているのは、北斗晶さんをはじめとした著名人の乳がん体験者が増えていること、ピンクリボン運動などの啓発活動が浸透してきたこと、アンジェリーナジョリーさん(女優)の乳房切除手術によって、乳がんの発生リスクが高まる「BRCA遺伝子」の診断が大きく報道されたこと、などが関係していると思われます。

乳がんの検査に欠かせないのが、医師による視触診、マンモグラフィー、乳腺エコー(超音波)の3つです。市区町村が実施する乳がん検診は、従来、視触診だけ実施するところも少なくありませんでした。しかし、触診で触れることができるしこりはある程度大きいため、がんが進行していることが多く、早期の乳がんを触診だけで発見するのは熟練した専門医でも困難という理由から、現在の乳がん検診ではマンモグラフィーが必須となっています。

40歳を過ぎたら乳がん検診を受診する

マンモグラフィーは、乳房を透明の板で挟んでレントゲン撮影をする乳房専用の撮影機器です。マンモグラフィーでは、「石灰化」と呼ばれる、乳腺内のカルシウムの沈着を映し出すことができます。多くの石灰化は良性ですが、がん細胞の一部の壊死によって起こることもあるので、マンモグラフィーは重要となるのです。

ただし、乳腺が発達している若い女性や乳房の大きい女性では、石灰化を明確に映し出すことは困難なため、そういった場合では、乳腺エコー(超音波検査)が実施されます。乳腺エコーはマンモグラフィーではわからない、小さなしこりを発見することができます。

また先述の触診で発見されたしこりの良性・悪性の判別も、乳腺エコーを実施することでわかります。乳がんは、乳房内に発達したリンパ管に入り込み、腋の下のリンパ節に転移しやすいため、乳腺エコーでは、リンパ節の腫れの有無もチェックします。

乳がんの確定診断は、乳腺に針を刺して細胞を採取する「穿刺細胞診」で行います。細胞診の方法には、腫瘤に触知しながら実施する方法、超音波で見ながら行う方法(超音波ガイド下)、マンモグラフィーで見ながら行う方法(ステレオガイド下)があります。

乳がんの治療後は、再発の有無を確認する目的で定期検査の受診が推奨されますが、どのくらいの頻度でどういった定期検査を受ければいいのか、といったガイドラインが存在していません。乳がんの再発は、手術部位の局所、リンパ節、骨、脳、肺、肝臓に起こりやすいため、重点的にこれらの部位を検査することになります。

通常は、手術を行った部位の診察と採血による腫瘍マーカー(CA15-3、CEA、BCA225など)の検査が行われます。画像検査では、X線検査は約半年ごとに、CT検査と骨シンチは1年ごとに行われます。脳転移は頭部MRIを実施することでで診断ができますが、定期検査に組み込まれていることはなく、脳神経症状が現れて、脳転移が疑われた場合に実施します。

乳がんはPETで検出しやすいため、乳がん診療では、PET検査は欠かすことができません。乳房のしこりには、良性と悪性があります。がんではFDG(がんが栄養とするブドウ糖の代謝の指標となる診断用薬剤)が集積するのに対し、良性腫瘍(線維腫、乳腺症、嚢胞)では、多くの場合に集積が見られないので区別できるのです。

しかし乳腺エコー、マンモグラフィー、MRIの方が検査費用が低く抑えることができうるえ、生検を実施すれば、ほぼ確実にしこりの良性・悪性の判定が診断ができるため、この確認にPETが実施することはありません。PETが乳がんの診断で有用となるのは、転移・再発の早期発見においてです。乳がんはリンパ節以外に、骨、肺、肝臓などに転移しますが、PETなら全ての部位を一度の撮影でチェックできるため、患者さんの心身の負担を大きく軽減できるのが最大のメリットです。

また乳腺専用のPET検査として、乳房にPETの検出器を当てて撮影する「PEM(乳腺専用PET:Positron emission mammography)」が、3mm程度の早期がんの発見も可能だとして注目されています。


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